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【浜村徹三のIPM教室】
トマトの主要病害虫のIPM(総合的病害虫管理) 2
アブラムシ類・ハモグリバエ類 編

アブラムシ類・ハモグリバエ類の防除

アブラムシ類
ワタアブラムシ、モモアカアブラムシ、ジャガイモヒゲナガアブラムシなど5〜6種類が寄生する。通常は卵ではなく子虫を産むため増殖能力が極めて高い。成幼虫の出す分泌物にすす病が発生する。高密度で環境が悪化すると有翅虫が生じ、移動分散する。広食性で作物間や雑草との移動も頻繁に起こるので、開口部には防虫網を張って、有翅虫の侵入を防ぐ。

生物的防除
コレマンアブラバチ;アブラムシに産卵管を突き刺し、体内に産卵する。卵から孵化した幼虫は体内組織を食べて成長し、アブラムシは死亡しマミー化する(褐色のミイラ状)。ワタアブラムシ、モモアカアブラムシに効果が高いが、ヒゲナガアブラムシには効果がないので、他の天敵を利用する。商品名;アフィパール、アブラバチAC、コレトップ。あらかじめムギに発生したアブラムシに本種を寄生させておく、バンカー法も開発されて、バンカー用ムギも市販されている。

ショクガタマバエ;幼虫がアブラムシを捕食する。商品名;アフィデント(製剤は蛹)

ヤマトクサカゲロウ;商品名はカゲタロウ、幼虫300頭が入っているので、これをスポット放飼する。

ナミテントウ;成虫・幼虫がアブラムシを捕食する。商品名;ナミトップ
 微生物製剤;
バータレック ;昆虫病原性糸状菌(バーティシリウム・レカニ)、高湿度で効果が高い。化学的防除;(商品名)

チェス水和剤;アブラムシ、コナジラミ等に選択的に効果があり、天敵への影響は少ない。吸汁行動を抑止して死に至らしめるので、やや遅効的である。

オレート液剤;界面活性剤であるオレイン酸ナトリウムが主成分で、気門をふさいで窒息死させる。天敵への影響はない。野菜類で登録がある。

アクタラ粒剤、モスピラン粒剤 ;定植時の処理に用いる。
物理的防除;防虫ネット、黄色粘着資材《バグスキャン、バグスキャンロール》



ハモグリバエ類
 トマトには以前からナスハモグリバエが発生したが、薬剤感受性が高く大きな問題ではなかった。ところが、1990年に発生が確認されたマメハモグリバエはほとんどの薬剤が効果がなく大きな被害をもたらした。更に1999年にはトマトハモグリバエ、2004年にはアシグロハモグリバエの発生が確認された。これらの4種は形態的にも生態的にもよく似ており、種類を正確に判別することは困難である。ここでは、マメハモグリバエを中心に述べるが、ハモグリバエ類として一括して扱うことにする。
 成虫の体長は2mm前後の小さなハエで、雌は太い産卵管を持ち、それを葉肉に刺して、にじみ出た汁液を摂食する。この摂食痕は葉表に白い斑点になって残る。産卵も葉肉内に行い、ふ化幼虫は潜孔して食害し、外からは「エカキムシ」の症状となる。大玉トマトよりミニトマトの被害が大きく、下葉から上に向かって枯れ上がる症状が見られる。
 マメハモグリバエが侵入した当初は有機リン剤や合成ピレスロイド剤はほとんど効果が無く、やみくもに薬剤をかけたが被害を抑えることは困難であった。その後、寄生蜂の利用試験が行われると、土着の寄生蜂も有効に働くことが明らかになり、それまでの大発生はリサージェンスによって引き起こされていたと考えられた。その後新しい有効薬剤がいくつか開発され、トマトハモグリバエやアシグロハモグリバエについては、マメハモグリバエの時ほどの大問題にはなっていないと思われる。

生物的防除
イサエアヒメコバチ ;成虫の体長は約2mmの黒色のハチで触角は短い。成虫はハモグリバエの幼虫を殺し、幼虫が大きい場合は近くに卵を産む。ふ化したハチの幼虫はハエの幼虫を食べて育つ。殺した幼虫が小さい場合は摂食する(ホストフィーディングと言う)。
25℃での発育期間(卵〜成虫)は約11日、寿命は10日で、200卵以上を産卵する。増殖可能な温度範囲は9〜32℃である。比較的温度の高い時期に効果が高い。ハモグリバエの発生初期に10a当たり100〜200頭を複数回放飼する。商品名;ヒメコバチDI、ヒメトップ 

ハモグリコマユバチ ; 成虫の体長は2〜3mmで、触角は長く、黒〜茶褐色。ハチは長い触角で葉を探索し、葉の上からハモグリバエの幼虫に産卵管を突き刺して、体内に産卵する。25℃の発育期間は約15日、寿命は7日、増殖可能温度は7〜30℃で、雌成虫は50〜200卵を産む。比較的低温で効果が高い。ハモグリバエの発生初期に10a当たり250〜500頭を複数回放飼する。商品名;コマユバチDS

イサエアヒメコバチ・ハモグリコマユバチ ;2種の混合剤。商品名;マイネックス、マイネックス91

ハモグリミドリヒメコバチ ;2005年に登録されたハモグリバエ用の土着天敵。光沢のある緑色のヒメコバチ。商品名;ミドリヒメ 

化学的防除
天敵製剤やマルハナバチに全く影響の無い薬剤はないので、注意して利用する。
カスケード乳剤 ;キチン合成阻害のIGR剤で、ハモグリバエ、アザミウマ、ガ類、ハダニ類などに活性がある。多くの天敵類には影響が少ないが、ハナカメムシ類、クサカゲロウ類には悪影響が強い。マルハナバチへの悪影響は2日程度。2000〜4000倍を収穫前日までに散布する。
コロマイト乳剤 ;成分は土壌放線菌に由来する殺ダニ剤であるが、ハモグリバエにも有効。天敵のカブリダニ類には影響があるが、天敵のハチ類への影響は少ない。マルハナバチへの影響は不明。
アファーム乳剤 ;鱗翅目及びアザミウマ目に活性が高いが、ハモグリバエ類にも有効。天敵への影響は種類によって異なるので、注意が必要。マルハナバチへの影響は2日程度。
2000倍を収穫前日までに散布する。
ダントツ水溶剤 ;ネオニコチノイド系の新しい殺虫剤で、カブリダニへの影響はそれほど強くないが、他の天敵、マルハナバチへの影響は不明。2000倍を収穫前日までに散布する。
粒剤の植穴処理 ;ダントツ粒剤、アクタラ粒剤、ベストガード粒剤は定植時に所定量を植穴処理する。

ワタアブラムシ

モモアカアブラムシ

マメハモグリバエ蛹

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