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【浜村徹三のIPM教室】
トマトの主要病害虫のIPM(総合的病害虫管理) 1
コナジラミ類・トマト黄化葉巻病 編

コナジラミ類・トマト黄化葉巻病の対策

オンシツコナジラミ

1974年発生が確認されたコナジラミで、現在でも防除を要する重要害虫である。

形態:成虫は体長約1mmで白色、静止する時は上翅どうしをくっつけている。蛹(4齢幼虫とも呼ぶ)はコロッケ状で、上部に剛毛が多数あり、周辺は角張りトゲがある。

被害:成虫、幼虫が葉裏に寄生し、吸汁する。寄生密度が高くなっても植物の異常はほとんど無いが、成・幼虫の排泄物にすす病が発生し、生育が衰えたり、果実が汚損する。


タバココナジラミバイオタイプQ

1989年に発生が確認されたコナジラミで、ポインセチアに寄生して全国に分散したと考えられる。タバココナジラミは世界的には多数のバイオタイプが知られ、バイオタイプBが独立したもので研究が進展中である。タイプBとQは遺伝子レベルで確認されたもので、外部形態上の区別は出来ない。タイプQの特性はピーマンに寄生し白化症を起こしたり、薬剤感受性の低下などの違いが明らかになりつつある。

形態:成虫は体長1mm弱で、静止時は上翅がやや離れているので、黄色の胴体が見える。蛹は扁平な円形で、周辺はなだらかに終り剛毛はほとんど無い。

被害:オンシツコナジラミと同様に多発するとすす病の発生もあるが、いろいろな作物で白化症や着色異常を引き起こして問題になる。トマトの果実では、周囲の葉に幼虫が寄生すると、完熟の時期になっても果実の一部分が青いままで残る着色異常果が発生する。更に、近年大問題になっているトマト黄化葉巻病ウイルスを媒介する。

生物的防除

オンシツツヤコバチ:雌成虫がコナジラミの3,4齢幼虫に好んで産卵し、寄生されたコナジラミは黒化したマミーになる。また、1、2齢幼虫には産卵管を刺して殺し、その体液を摂取する。コナジラミの発生初期に3〜4回放飼する。オンシツコナジラミに有効で、シルバーリーフコナジラミではやや劣ると言われる。製剤は厚紙に黒色マミーが張りつけてあり、この紙を作物に吊るす。商品名: エンストリップ、ツヤコバチEF、ツヤトップ

サバクツヤコバチ :シルバーリーフコナジラミ用に開発された寄生蜂で、オンシツツヤコバチと同様の性質を有するが、高温に強い。発生初期に放飼し1週間間隔で3〜4回放す。成虫を殺す能力は無いので、密度が高すぎる場合は、密度を落としてから放飼する。
商品名:エルカード

微生物製剤

プリファード水和剤:昆虫病原性糸状菌(ペキロマイセス フモソロセウス)がコナジラミ類の全ステージ(卵、幼虫、蛹、成虫)に感染する。本剤の効果を十分に発揮させるためには散布後8〜9時間にわたって施設内を湿度80%以上に保つ必要があり、その他の時間もできるだけ高湿度に保つことで効果は高くなる。葉裏にかかるよう7日間隔で3回散布する。

化学的防除:(商品名)
※黄化葉巻病発生圃場での防除は次の黄化葉巻病の項参照のこと

ラノーテープ :殺虫成分ピリプロキシフェンを含むテープ。天敵類、花粉媒介昆虫への影響はほとんどない。野菜類(施設栽培)に登録がある。

チェス水和剤 :オンシツコナジラミの他、アブラムシ類にも効果がある。吸汁行動を抑止して死に至らしめるので、やや遅効的である。

モスピラン水溶剤 :オンシツコナジラミの他、アザミウマ類にも効果がある。天敵にも多少悪影響がある。オンシツツヤコバチとは併用困難、マルハナバチにも3日程度影響がある。

物理的防除

防虫ネット:コナジラミのハウス内への侵入や外への飛散を防ぐため、0.4mm目合いの防虫ネットを全面に張る。
黄色粘着資材:黄色に誘引されるコナジラミの性質を利用して、捕殺する。内部は予察用に黄色板、(バグスキャン )、ハウスの外には帯状の バグスキャンロール を張り、周辺を飛んでいるコナジラミ類を捕殺する。

トマト黄化葉巻病(TYLCV)

タバココナジラミ(バイオタイプB=シルバーリーフコナジラミとバイオタイプQ)によってのみ媒介されるので、コナジラミの項で本病を解説する。

発生地域と系統:九州や四国を中心に発生している激症タイプのイスラエル系統(長崎株、土佐株)と東海地方を中心としたマイルド系統(静岡株、愛知株)がある。両系統とも分布は拡大傾向で、関東地方(群馬、埼玉、神奈川、栃木)でも発生が報告され、愛知ではイスラエル系統の発生も確認されたので、両系統の混発も懸念される。

症状:激症タイプのイスラエル系統では、葉が巻いて枯れあがり、株全体も枯死する。マイルド系統は頂葉の黄化や巻葉、節間の短縮、新芽の萎縮などがあるが、栽培中期以降の感染では収穫可能な場合も多い。

コナジラミとウイルスの関係:コナジラミの幼虫や成虫が保毒トマトを30分以上吸汁すると4〜9時間の潜伏期間を経て伝搬能力を持ち、10日以上(ほぼ死ぬまで)伝搬能力を持つ。この保毒成虫が未保毒のトマトを吸汁した場合、最短15分で伝搬した例が知られるが、24時間の吸汁で60〜80%の伝搬率である。植物内の潜伏期間は10〜30日と差が大きい。ウイルスの経卵伝染はしないと考えられている。

防除対策
植物体内のウイルスは薬剤で殺すことはできないので、発病株の除去とコナジラミの防除によるウイルスの分散防止が主な対策となる。
以下に具体的な対策を示す。

“病株の除去:焼却や土中埋没処理とし、絶対に放置しない。

∈邨燭涼翆如Д魯Ε稿發縫肇泪箸量気せ期を作り、蒸しこみを行い、ウイルス、コナジラミの連鎖を断ち切る。

7鯀管弔猟蠖◆未発生地域で育苗した苗を用いる。

ぅ灰淵献薀澆硫蹴愿防除:タバココナジラミのバイオタイプB(シルバーリーフコナジラミ)とバイオタイプQでは薬剤感受性はやや異なるが、どちらにも有効な薬剤はベストガード、サンマイトなどがある。これらの剤はいずれも天敵やマルハナバチに影響があるので、IPMを一時中断する必要が生じることがある。

サンマイトフロアブル :本来殺ダニ剤であり、ハダニ、サビダニに有効であるが、トマトに寄生するすべてのコナジラミの成虫・幼虫に卓効を示す。1000〜1500倍を収穫前日までに散布する。天敵類への影響は全般的に強く、マルハナバチへの影響は1〜4日ある。劇物であり、取り扱い注意。

ベストガード水溶剤 :ネオニコチノイド系殺虫剤で、コナジラミ、アザミウマ、アブラムシに有効。1000〜2000倍を収穫前日までに散布する。天敵類への影響は不明なものが多いが、やや強めと考えられ、マルハナバチへの悪影響は10日以上である。
(この他、トマトの他害虫に登録のあるアファーム、スピノエースも有効)

ゥ灰淵献薀澆諒理的防除:0.4mm目合の防虫網が有効である。ハウス内の蒸れの問題があるが、繊維を細くするなどで改良されている。また、ハウスの外側に幅の広い黄色粘着幕(バグスキャンロール)を張ることで、周辺を飛んでいるコナジラミを捕殺し、有効とされる。

Ε灰淵献薀澆隆鷦膺∧の除去:タバココナジラミはセイダカアワダチソウ、イヌタデ、マメ類など極めて多くの植物に寄生するので、ハウス内外の雑草等を除去し、環境整備を図る。また、家庭菜園のトマトでの黄化葉巻病の発生にも注意を払い、地域ぐるみで対処する必要がある。

オンシツコナジラミ成虫

オンシツコナジラミ蛹

トマト着色異常

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